情熱の温度でパンは焼ける。オーナーシェフ山本敬三からのメッセージ
 
【プロローグが求める人材】
うちの店は厳しい。でも、そのほうがきっと君のためになる。

「なんでもできるけど、クールでいたい」という人より、「なんにもできないけど、ハートだけは熱い」という人を、プロローグは求めています。
山本「どんな奴がほしいかって、熱い奴がいいですよ。
不器用でも、やる気さえあれば、なんとかなる。ある程度のところまでは絶対いきますよ。そっから先に行ける奴は才能かもしれないけど。やる気と熱い思いがある奴は絶対いきますよ。
『おまえ、与えられた今日のこと、明日のこと、それだけ精一杯やれよ』って、よくいうんです。『私、目標がない』とか、『将来の夢が見えてこない』とかいわれるんだけど、そんなの俺だって見えてないですよ。でも、目の前にあることをがむしゃらにやってれば、自然と夢って実現できてるものじゃないですか。俺も独立したときは必死で、将来こうなりたいとか、そんなことぜんぜん思ってなかったですよ。でも、必死だったからここまでこれたし。
がむしゃらな時期って絶対必要じゃない? 特に若いときは。後先考えず目の前のこと、がむしゃらに。そういう時期もない癖に、なんかほわーっと冷めてる奴多いじゃないですか。熱い思いがない奴、全体的に多くないですか? 損得抜きにして、打ち込んだり、がむしゃらにいく時期って、絶対必要だと思うんですよ。そうする前に損得勘定したり、向いてねえなとか思う奴、多いじゃないですか。限界までいってからそう思うならいいけど。一度は全身全霊つぎこんでやるべきだなと思うんですよ」

募集条件、未経験者であること。夢は真っ白なキャンバスに描いてほしい。

即戦力が求められるパン業界。にもかかわらず、プロローグは、「未経験者歓迎」どころか、未経験者しか募集しないという異例のリクルート方針を貫いています。
山本「いちばん最初に教えてくれた人とか、いちばん最初の上司って、いくつになっても覚えてるものじゃないですか? それすごく大事。まっさらな状態の人材を入れたいの、なんでかっていうと、それなんですよ。大げさかもしれないけど、いちばん最初に仕事教えた奴とか、いちばん最初に入った会社が、一生の仕事のやり方とか考え方を、決めちゃうところあると思うんですよ。
一度ゆるいとこ入ってから、厳しいとこいくのってたいへんですよね。人って、環境とかポジションとかによってすごく左右されちゃうじゃん。最初にゆるいとことか、ちゃんとしてないとこにいっちゃうと、人って流されて、それが当たり前になっちゃう。そうならないように新人から入れたい。
基本は『いっしょに成長していこうよ』です。『俺のとこに入ってきたら、いろいろ教えてやるから』とか、そういう『上から目線』じゃないからね。俺もまだまだだし」

【企業理念】
いいパンは、いい奴にしか焼けない。パンが売れるのは自分が認められること。

工場の中で一日中すごすのでも、決まった商品をセールスする仕事でもない。オープンキッチンでお客様から仕事ぶりを見ていただき、「おいしかった」と声をかけられる。それがプロローグの仕事です。
山本「いい人間性を持ってる奴じゃないと、いいパンは作れないと思うんです。魂とか思いがそのパンの中に籠ってないと。
一生の仕事として選んでもらいたい職業なんですよ。すぐあきらめないで。当然、朝も早いし。肉体労働でしょ。土日基本的に休めないから。そういうきつい状況だけど、よろこびはむしろ普通の仕事より、一般のサラリーマンの人よりは絶対に大きいと思うんですよ。
工場にいたら、自分が作った商品をどういう人が買ってるかわかんない。でも、こういうお店ってのは、もろライブで見られる。
まったくないところからパンを作り上げるよろこび。こんだけ店ある中でわざわざうちを選んで買っていただいてるじゃない。自分が手間ひまかけて作ってるものを、自分の店に買いにきてくれること、それは絶対うれしいですよね。
人が作ったものを売ってるわけじゃないから、思い入れもぜんぜんちがうんですよ。車とかそういう高いもの買うときって、売っている人の人間性に惹かれて買うことって多いと思うんですよ。この人だったら付き合ってもいいなと思ったら、絶対その人から買いますよね。パン職人もいっしょだよ。『同じあんぱん、100円で買うんだったらここで買おう』って、そう思ったお客さんに買っていただいてる。

1日数千個を焼くプロだから、たった1個に思いを込める。

動作が速いこと、笑顔があること、思いやりの心を持つこと…。プロローグの社訓である『10の約束』に並ぶのは、人としてごく基本的なことばかりである。
山本「こんなの当たり前のことでしょ。でも、当たり前のことできてない奴、俺も含めて多いから。当たり前のことをひとつでも多くできてるのがいい店なんだと思うよ。いい店の条件って、そこで働いてる人の気持ちだから。
入って、『お、明るいな』『この店、雰囲気いいな』って。働いてる人が楽しそうに働いてないと、いい店ではない。プロローグは駅から遠い場所にあえて作っているんだけど、わざわざきていただくために必要なのって、雰囲気だもん。お客さんはパンを買いにくると同時に、雰囲気と人を買いにくるから。本当に楽しそうに働いてないと、お客さんに伝わりますよ。
パン屋さんって滞店時間短いから。30秒とか1分とかの判断じゃない? その中で『また、この店こよう』って思っていただかないとだめなわけじゃん。
よくいうのは、100個作るとなると、どうしても100個中の1個だからという感じで、雑になっちゃうんですよ。でも、お客さんにとっては貴重な1個。そういう思いで作らないと。10年生が作っても、1年生が作っても、同じ100円だよね。慣れてない奴こそ、気持ちをこめて作らないとお客さんに対して失礼じゃないですか。気持ち込めてちゃんと作るということだよね。熱い思いで」

【事業展開】
パン職人が、パンを作り、お菓子を焼き、イタリアンを料理する。プロローグだけで可能になるスキルアップがある。

業界最多規模250種類のパンを毎日作る高度な技術。それを支えるパン職人としての誇りと情熱を、ぜひお客様に見ていただきたい。それがプロローグの志(こころざし)です。
山本「店ってステージじゃん、パン職人の。『パンステージ・プロローグ』って、『パンの舞台の幕が上がりますよ』って意味だから。だからオープンキッチンになってるし。職人にとっての舞台だから。
毎日のことだからね。地味でしょ。朝早いし。パンって究極の脇役だから。決してメインディッシュにならない。でもないと絶対だめなんですよ。料理人とかパティシエの人に比べて、パン職人の地位って高くないでしょ。でもそうじゃない。レストランやったのも、お菓子屋やってるのも、パン屋さんだったら絶対できるなって思ってるからなんですよ。感性も、体力的にも、技術的にも。パン屋さんだからこそできるなと思って。『パン屋さんがレストランやるとこうなる』『お菓子作るとこうなる』っていうような目線でやりたいんですよ」

パン職人の誇りを胸に壮大な事業展開を描く。近日中には、パン屋でイタリアンが食べられて、お菓子もイートインできる、オンリーワンの業態である4店舗目「プロローグ・プレジール」をオープンさせる。
山本「プロローグ入ると、パン職人でありながら、お菓子もできるし、ピザも焼けるし、料理も作れる。ひとつの会社でそれだけのスキルアップできます。普通なら、お菓子はお菓子のプロ呼んできて、料理は料理のシェフ呼んできてってやって、それぞれ別部門になるんだけど、それだともうつまんなくなっちゃうんです。あくまでもパン職人であって、それがお菓子もできて、料理もできて、というのがコンセプトだから。
カフェレストラン・エピソードは、立ち上げのとき俺が自分で現場に入って、ソースからなにからレシピをすべて作った。オープンする1年前から、料理学ぶために学校行きました。自分でやらねえと気が済まねえじゃん。トマトソースとかもぜんぶ自家製だよ。
店長になる奴もそう。自分でレジも打てるし、パンも作れるし、サンドイッチも作れる。なんかあったらぜんぶできる奴がやってるんですよ。大手さんにいれば、ひょっとしたら歯車の1個になってしまうかもしれない。小さいとこはそうじゃない。うちに入るメリットってまさにそうじゃん。ぜんぶ覚えられるんだから。やる気になれば。

【社会貢献】
プロローグだから人の役に立てる。人の役に立てるから熱くなれる。

リテールベーカリーは、地域の人たちの、血となり骨となり、元気にも勇気にもなるパンを手作りします。
山本「世の中のためになりたいとか、社会に貢献できる人間になりたいって奴がほしいんだよね。なんのためにパン屋になったのって聞かれたときに、最終的に言ってもらいたいことって、そこなんですよ。
きついのは当たり前なんですよ。やめるのは今日でもできるけど、つづけることってすごいたいへんじゃん。つれえなとか、やめたいなとか、俺も思ったことある。でも、なんでつづけてこれたのかなと思うと、この仕事を通じて、人の役に立てたりとかするからなんですよ。
大げさに言えば、地域の食文化に貢献してるのもそうじゃん。10年以上もやってれば、うちのパン食べて大きくなったという子供もいっぱいいますよね。親子2代できてくれてるお客さんもいる。
朝6時から、店を開けてるのもそう。開店のときには70種類をもう並べてる。その時間なら朝飯に間に合いますよね。会社行く途中で立ち寄って、朝食買っていく人もいるし。いつも買っていくお客さんに『朝早く店にきても、いつも元気に働いてるから、自分も今日一日がんばろうって思う』っていわれたことあります」

被災地で、学校で、農村で、世界で。パン職人のできる社会貢献とは。

岩手県陸前高田市の被災者のみなさんにパンを支援する活動をしています。
山本「『被災地に持ってくから、カレーパン400個作ってくれ』っていわれたら『はい!』ってすぐ返事できるパン屋じゃないと。『えーっ? なんだよ、こんなに忙しいのに』って思う奴じゃだめなんですよ。なにごとに対しても熱い思い持ってないと」

オーナーシェフ山本敬三は製パン学校で教鞭(きょうべん)をとっています。また、数々のプロ向け講習会に講師として招かれているのも、高い技術と実績を評価されてのことです。
山本「パン職人だけど、世の中に貢献できる奴とかを目指さないとつまんないじゃない。この前も復興のための講習会(授業料を全額被災地に寄付)やらせていただいたんですけど、ああいうことって普通の仕事じゃ、なかなかできないじゃないですか。自分たちの思いや技術を伝えて、そのためにたくさんの人がお金を払ってきてくれて、そのお金を寄付できるとかさ。
当然、人前でしゃべれる人間じゃないと無理でしょ。講習会に、必ず社員を助手として連れてって、授業の最後にみんなの前でしゃべらせるのは、そういうのできる人間になってほしいから」

海外での活動にも社員を同行させ、世界で活躍できる舞台を用意しています。
山本「どこにでもあるじゃない、小麦粉って。この仕事を通じて、国際的に通用する奴を目指してもらいたいんですよ。中国・上海で開かれた展示会でパン作ったり、カンボジアで技術指導もしました。言葉が通じないところで、一度も見たことのない粉使って、日本とはまったくちがう水でパンを作る。自分のやってきたことや、感性が試される」

神奈川県秦野市で作られる小麦の刈り取りを自ら行い、パンを作っています。
山本「パン屋である以上、自分の国でとれた小麦を使いたいっていうのあるじゃん。農家の人の思いがこもってるし、食料自給率の向上にだって役立てる。社会貢献したいなっていうのあるじゃん。刈り取った小麦は障害者施設の人が石臼で挽いて製粉やってるんですよ。それを粉として使ってるんです」

【労働環境】
「長時間労働」「男社会」は当たり前か?プロローグが先頭に立って、業界を変えていく。

プロローグは、「おいしいパンを作るための職人のこだわり=長時間労働」となりがちな、パン業界の体質も変えようとしています。
山本「おいしいパン作るためにがむしゃらにやるんだけど、一方で効率も追いたい。労働条件、休日の日数の問題。この業界って、そういうことがないがしろにされて、職人が犠牲になっているところがある。変えないと。
それをやるために、カスタードを自分で炊かなくなったりとか、手を抜いたり、端折ったりするんだったら、それはダメです。だけど、こだわり持って作ってるから、いいパン作るためには何時間でも働いていい、ということになっちゃいけない。1日でも多く休みは増やしたいし、1時間でも早く終わらせてぴしっと帰れるように。そういう姿勢は忘れないようにと思ってます」

体育会系の男社会、というパン業界に対する先入観は、プロローグにはあてはまりません。
山本「女性大歓迎。女性大活躍中ですよ。新店プロローグ・プレジールの店長、4店舗統括のマネージャー、パンステージ・プロローグの店長、みんな女性です。
むしろ、女性いないとパン屋は成り立たないよ。専門学校の生徒も半分以上女性でしょ。強さは男より断然女ですよ。すぐ逃げてくのとか、弱音吐くのとか、9分9厘男ね。女は弱音言わないですよ。
女性で結婚してつづけてる人ももちろんいる。ただ、女性で子供が生まれるとなるとたしかにきついところはある。でもやめちゃったら、一度身に付けた技術だからもったいないんですよ。いままではみんなが若い会社だったけど、子供がある程度成長したら戻ってきて、一生にわたって働けるような環境もこれからは作っていきたい。

パン屋はスタッフひとりひとりで作るもの。プロローグは社員の「気持ち」を大事にしています。
山本「いちばん残念なのって、志半ばでいっしょにやってきた仲間がやめていくことなんですよ。スタッフがいないと成り立たない仕事なんだから。みんなの気持ちがお店を作ってるんだから。
なんでプロローグが4店舗も展開できるのかって、人がいるからじゃないですか。支店作りたいと思っても、人がいなくて断念してるパン屋さんありますよ。俺の思いとか気持ちを理解してくれるメンバーだから、ここまでこれた。
スタッフのみんなにはすごく感謝してます。みんながいるからこそ夢を追える。これからもひとつの夢をみんなでいっしょに追っていきたい」

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